解説
【インクを積み上げて作る、硬質でリッチな立体感】
油性インクを使用し、版(スクリーン)を通して何度も重ね刷りを行う、あるいは特殊な厚膜版を使用することで、インクの層を物理的に高く積み上げるプリント技法です。
通常のプリントとは一線を画す、パキッとした硬さと厚みを持った仕上がりが特徴です。
まるでシリコンパーツやラバープレートを貼り付けたような、高級感のある凹凸を表現できます。
【発泡プリントとの決定的な違い】
最大の違いは「立体感の質」と「エッジの鋭さ」です。
熱で膨らませる発泡プリント(パフプリント)が、角の取れた丸みのある「柔らかい(スポンジ状の)」立体感であるのに対し、厚盛プリントはインクそのものを厚く塗って固めるため、「硬質でシャープ」な立体感になります。
デザインの角(エッジ)が垂直にしっかりと立つため、ロゴの輪郭がぼやけず、より洗練された都会的な印象を与えます。
また、油性インク特有の光沢(ツヤ)も加わり、リッチな質感を演出します。
【厚盛プリント(油性)のメリット】
- 視覚と触覚に訴えるインパクト
触るとはっきりと分かる段差があり、光が当たると立体的な陰影が生まれます。平面的なプリントでは出せない重厚感があり、シンプルなワンポイントロゴであっても、ブランド品のような説得力を持たせることができます。
- ナイロン・ポリエステルへの強力な定着
油性インクを使用するため、綿素材だけでなく、水性インクが苦手とするナイロンジャケットや、ポリエステルのスポーツウェアにも強力に定着します。アウターの背中や胸元に、異素材感のある立体ロゴを入れるといった使い方が可能です。
【知っておきたい特徴(重要な制約)】
- 細かいデザインは「潰れ」に注意
インクを厚く盛る際、高さが出るだけでなく、どうしても横方向にもインクが広がります。
そのため、線と線の隙間が狭いデザインや、画数の多い漢字などは、インク同士がくっついて隙間が埋まってしまう(潰れる)傾向があります。
この技法の良さを活かすには、太めの線で構成されたシンプルなロゴマークや、文字間を広く取ったタイポグラフィが推奨されます。
- 色は「特色」指定のみ
基本的には単色のインクを重ねていくため、CMYKのようなフルカラー表現やグラデーションはできません。PANTONEなどの特色指定による、色面のはっきりしたデザインに限られます。
【こんなグッズ作成におすすめ】
- ストリートブランドのTシャツ: ボックスロゴを厚盛にして、既製品のような高級感を
- スポーツチームのアウター: ナイロンジャケットに、シリコンワッペンのような質感のロゴをプリント
- キャップやバッグへの加工: 硬質な素材感に負けない、存在感のあるワンポイントとして






