解説
【Tシャツプリントの王道。ゴムのような質感でくっきり魅せるスタンダード技法】
メッシュ状の「版(スクリーン)」を作成し、そこへ水性のゴム質インクをヘラで刷り込む、最も代表的なシルクスクリーンプリントの手法です。
インクが生地に染み込むのではなく、表面に層としてしっかりと乗るため、生地の色に負けない鮮やかな発色と、ゴムのような弾力のある質感が特徴です。古くからアパレル業界で標準的に使われており、耐久性と仕上がりの美しさには定評があります。
【インクジェットプリントとの決定的な違い】
最大の違いは「色の作り方」と「版の有無」です。
CMYKの4色を掛け合わせて近似色を作るインクジェットとは異なり、ラバーインクは職人がインクそのものを調合して色を作ります(特色)。
そのため、PANTONEやDICといった色見本帳を使用した厳密な色指定が可能で、企業のコーポレートカラーなども忠実に再現できます。
ただし、デザインの1色ごとに1枚の版が必要になるため、色数が増えれば増えるほど版代(初期費用)がかかる仕組みになっています。
【水性インクのメリット】
- 安全性と環境への配慮
石油由来の成分や有害な化学物質(フタル酸塩など)を含まないため、環境負荷を抑えられます。溶剤の規制により世界的にも多くのプリントで水性インクが用いられています。
- 優れた耐久性
インクが乾燥・硬化すると強固になるため、摩擦や洗濯に強く、ひび割れや剥がれが起きにくいのが特長です。長く着続けるユニフォームや、品質が求められる販売用アイテムに適しています。
- 大量生産時のコストパフォーマンス
版代はかかりますが、一度版を作ってしまえば、同じデザインで枚数を刷るほど1枚あたりのプリント単価は下がります。そのため、クラスTシャツやイベントTシャツなど、ある程度の枚数をまとめて製作する場合に最も経済的です。
【知っておきたい特徴(素材との相性)】
- ポリエステル素材の注意点(ブリード現象)
ドライTシャツなどのポリエステル素材にもプリント自体は可能ですが、インクを乾燥させる熱処理の際に、生地の染料が気化してインクに移り、プリント色が変色してしまう「再昇華(ブリード)」という現象が起きるリスクがあります。
特に濃い色のポリエステル生地に白いインクを乗せる場合などは注意が必要であり、基本的には綿素材へのプリントが推奨されます。
なお、表面が滑らかなナイロン素材はインクが定着しにくいため、通常は非推奨となります。
- 不向きな素材
水性インクは素材の繊維に染み込むことで定着するため、表面がコーティングされているものにはインクが定着しにくいです。
【こんなグッズ作成におすすめ】
- クラスTシャツ・イベントウェア: 枚数が多く、全員で同じデザインを安く作りたい場合
- 企業のスタッフユニフォーム: ロゴの色味(コーポレートカラー)を正確に表現したい場合
- アパレル・物販商品: 売り物として通用する、しっかりとした厚みと耐久性のあるプリントを求める場合






